狂い咲きシネマロード

哀しきアラサーリーマンの映画と漫画と愚痴。映画も漫画も古い物やマイナーなものが好き。たまに最新映画。勝新信者、渡瀬恒彦ファン。

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『暗黒街大通り』 高倉健でさえ歯が立たない金子信雄&安部徹

高倉健主演の任侠映画『暗黒街大通り』を観た。
侠客だった父親を殺された幼い3兄弟が成長しヤクザとなり、因縁の組織と渡り合っていく話だ。

日活時代の井上梅次映画でヤクザが出る映画自体はゴマンとあるが、本格的に撮った「任侠映画」は初めて観る。
山下耕作や小沢茂弘のスタイルとは全然違っていて、むしろ深作や中島貞夫に近い。
これは最近観たやくざ映画の中ではかなり面白かった。

『暗黒街大通り』
監督 井上梅次
主演 高倉健

暗黒街大通り [DVD]


父親(大木実)が殺された後、金子信雄の家に居候し、ドラ息子に虐められたり優しい娘に励まされたりする少年期が描かれる。
90分の任侠映画だとこういうのは少しの回想で済ます事が多いにも関わらず、映画の冒頭に結構な尺で描かれる。これは珍しい時間の使い方だと思う。
やがて3兄弟は高倉健・梅宮辰夫・待田京介に成長し、ドラ息子は菅貫太郎、娘は三田佳子になる。

父親が死んだ当時、既に思春期頃の年齢だった長男・高倉健に比べ、幼かった弟2人はそれほど復讐に燃えているわけでもない。
にも関わらず、弟に恋人ができそうになると「女が交じると絆が弱まる」などと言って交際の邪魔をする高倉健は、まるで抜け駆けを許さない童貞学生である。
高倉健自体はいつもながらの侠客ではあるが、復讐に取り憑かれるあまり独り善がりになっていて、最後までそれが治ること無く、やがて悲劇を呼び起こす。
この高倉健の造型は深作の『狼と豚と人間』を思い出した。
あれも高倉健が「正しくない」行動を取り続ける映画だ。



井上梅次の演出はやはり上手く、別々の場所にいた2人が梅宮辰夫がリンチされている場所に向かうカットバックなんてかなり緊張感がある。
一方で、殴り合いや殺し合いの場面になると、東映監督のそれに比べて「裕次郎映画」感が出てしまって勿体ないが、タイトルにもなっている「大通り」ショットの決まり方は出色。

さらに、今回は金子信雄と安部徹のWボス制である。
金子信雄は兄弟の仇でもあり、電話一本で情報を操り、同士討ちへと向かわせる「山守組長」の原型のようなキャラだ。
さらに、そんな金子側と敵対している安部徹もかなりのもの。
権謀術数の力量は同レベルで、むしろ悪党なりに娘(三田佳子)を愛している金子信雄より、「自分の娘(緑魔子)にすら情が沸かない」と嘯く安部徹のほうが一歩上かもしれない。
普通の任侠映画ではラスボスを務めるような悪漢が2人もいるのだ。
この2人を前にしてはさすがの侠客3兄弟も相手が悪く、振り回されることしか出来ない。
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Author:スギノイチ
映画と漫画に溺れつつ、それらと無縁の世界で働く哀しきリーマン。
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