狂い咲きシネマロード

哀しきアラサーリーマンの映画と漫画と愚痴。映画も漫画も古い物やマイナーなものが好き。たまに最新映画。勝新信者、渡瀬恒彦ファン。

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森崎東の『新宿芸能社 女シリーズ』レビュー

少し前、渋谷シネマヴェーラで『女生きてます 盛り場渡り鳥』を観た。
森崎東の『新宿芸能社 女シリーズ』の4作目で、これだけソフト化していなかったので未見だったのだ。
これで4作全て見たことになるが、どれも傑作だった。
4作だけとはいえ、シリーズ全てアタリというのはプログラムピクチャーでも珍しいだろう。

ストリッパー幹旋所”新宿芸能社”を舞台とした喜劇という以外、話に明確な繋がりは無く、社長である森繁の妻役も毎回違う。
通底するのは、普通の映画ではモブキャラどころか登場すらさせてもらえないような社会的下層やマイノリティにいる人々が、皆生き生きと描かれている所だ。
俺が森崎映画を見続ける理由でもある。

『喜劇 女は男のふるさとヨ』(1971)
主人公の蓮っ葉な姐さん(倍賞美津子)と、頭の弱い聖女(緑魔子)というのは、森崎東の映画でよく見られる人物構成だ。
緑魔子は森崎映画以外でもこんな役が多いが、やはり格別にハマっている。
緑魔子に霞んで、倍賞美津子がちょっと割りを食ってしまっている感じはある。
片目だけ整形して二重にするという、みみっちくも健気な白痴美。
でも、一番良いのは警察署での中村メイコ。

『喜劇 女生きてます』(1971)


女房役は中村メイコから左幸子に変更されているが、まったく不足なし。
尻に敷かれる体をとっている森繁と、男の愛嬌を承知で尻に敷く左幸子。
こういう関係性をさらっと描く。

”長屋共同体”的な作風も油が乗り、田中邦衛達の騒動でピークに達する。
クライマックスでは、直接的な感動シーンなんてめったに描かない森崎東の「泣ける」演出。
いいね。

『喜劇 女売り出します』(1972)


中村メイコ、左幸子に比べると、市原悦子の女房役は少し影が薄い。
ただ、それは夏純子と米倉斉加年が輝きすぎているからでもある。
今回に限っては森重でさえも翳る。

”聖なる白痴”ではなく、倍賞美津子の路線に近い夏純子の健康的な色気。
潰された手と逆の手を掲げてニヤリと嘯く米倉斉加年のしぶとい格好良さ。
クソリアリズムとも重喜劇でもない。なんだろうこれは。

『女生きてます 盛り場渡り鳥』(1972)
最終作だが、これだけVHSすら出ていない。
中村メイコが妻役に返り咲いているが、映画としてのバランスは悪い。
森繁と中村メイコが急に出てこなくなったと思ったら川崎あかねと山崎努が主人公化するし、春川ますみは毒親というレベルを超えたモンスターぶりで過剰に目立ち過ぎだ。
春川ますみとなべおさみの顛末なんてグロテスクと言ってもいい。
だが、観ていて振り回されぱなしのこの感覚が良いのだ。

それに、無茶苦茶やっているようで喜劇演出は充実している。
なべおさみがよろけた時に合格祈願の紙が破れて裏のエロポスターが一瞬見えたりとか、財津一郎の落とした鞄をキャッチするなべおさみだとか、かなり計算していないと撮れないだろう。
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Author:スギノイチ
映画と漫画に溺れつつ、それらと無縁の世界で働く哀しきリーマン。
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